アーティストが持つ権利を理解しよう(その1)

株式会社デジタルライツ・ラボ 代表取締役   秀間修一



音楽出版事業の株式会社デジタルライツ・ラボは、2024年12月にクリムゾンテクノロジー株式会社のグループ会社になりました。今後、クリムゾンテクノロジーは、音楽アーティストの皆様の収益の最大化を目指し、従来の原盤配信ディストリビューション事業に加え、同社を中心に著作権管理事業を積極的に進めていきます。
そこで、これを機に今回から複数回に分けて音楽アーティストが持つ権利の解説を行いたいと思います。全ての音楽アーティストの方にご理解頂けるように、基本から最新情報まで順を追ってお届けする予定です。アーティストが持つ権利を理解することは、既にアーティスト活動を行っている人はもちろん、これからアーティストを目指そうという人にとっても、権利を活用することによって生じる人格的・経済的利益を最大化するうえで非常に重要なことです。是非最後までお付き合いください。

アーティスト活動から発生する権利の種類
1回目の今回は、アーティストが持つ権利の種類を解説します。 アーティストはさまざまな活動を行いますが、それらを整理すると以下のように分類することができます。アーティスト活動を行うと、多くの場合、著作権法上の権利が生まれます。また、アーティストにはタレントやプロスポーツ選手などと同様に「パブリシティ権」という権利が認められています。
(上記の表の「著作隣接権」には「実演家人格権」と「報酬請求権」が、「著作権」には「著作者人格権」が含まれる。)

タレントとして発生する権利→パブリシティ権
アーティストなどその存在自体に顧客吸引力を有する者には「パブリシティ権」があります。  パブリシティ権は、それを規定する専用の法律はありませんが、2012年に最高裁判所が認めたことにより権利として確立されました。最高裁は、専ら肖像等の持つ顧客吸引力の利用を目的とするといえる以下の3つの類型についてパブリシティ権を侵害する行為であると認定しました。  ①肖像等それ自体を独立して観賞の対象となる商品等として使用すること→ブロマイド写真やグラビア写真などが該当するものと考えられる。  ②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品に付すこと→キャラクター・グッズなどが該当するものと考えられる。  ③肖像等を商品等の広告として使用すること  パブリシティ権が認められたことにより、タレントやプロスポーツ選手など著名人の写真集を出版する場合や、肖像やロゴマークなどを商品の広告に使ったりキャラクター・グッズを製造・販売したりする場合は、本人の許諾が必要となります。

実演活動から発生する権利→実演家人格権・著作隣接権・報酬請求権
アーティストがコンサートやレコーディングや映画出演などで実演を行うと、「実演家」として実演家人格権・著作隣接権・報酬請求権が発生します。著作隣接権は実演家の経済的利益の保護を目的とした権利(財産権)、実演家人格権は実演家の人格的利益の保護を目的とした権利(人格権)です。 このうち著作隣接権は、実演の利用を禁止することのできる強力な権利(許諾権)であるのに対し、報酬請求権は、許諾権ではないので実演の利用を禁止することはできませんが、実演を利用したら報酬や補償金を請求することのできる権利です。 著作隣接権と報酬請求権は他人に譲渡することができますが、実演家人格権は譲渡することができません。レコーディングにおける実演の場合、実演家の著作隣接権は原盤制作者に譲渡されるのが普通です。 なお、実演家がこれらの権利を取得するのに、何らの手続きも必要としません。実演を行うと自動的に権利が発生します(無方式主義)

アーティストが持つ権利を理解しよう(その2)に続きます。


【会社概要】
会社名 クリムゾンテクノロジー株式会社
代表者 代表取締役 飛河 和生
所在地 東京都世田谷区池尻2-37-2
URL https://crimsontech.jp/
事業内容 音楽配信ディストリビューション、Voidolシリーズの開発・販売、ソフトウェア受託開発