アーティストが持つ権利を理解しよう(その4前半)
株式会社デジタルライツ・ラボ 代表取締役 秀間修一
今回は、著作者が持つ財産権としての著作権のうち著作物を無形的に利用するときに働く権利である「上演権」「演奏権」「上映権」「公衆送信権」「伝達権」及び「口述権」の6つの支分権を取り上げて解説します。音楽業界ではこれらの支分権のうち「演奏権」と「公衆送信権」が特に重要です。前回解説した「複製権」は著作物を有形的に利用するときに働く権利ですが、これに対し、今回取り上げる「上演権」「演奏権」「上映権」「公衆送信権」「伝達権」及び「口述権」は、いずれも形に残らない利用形態に関する権利です。
上演権・演奏権(22条)
著作権法22条では、「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下『公に』という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」と規定し、
著作者に「上演権」と「演奏権」を与えています。
「上演」とは、「演奏(歌唱を含む。)以外の方法により著作物を演ずること」(2条1項16号)をいいます。したがって、音楽の著作物を演じるときに働く権利が演奏権で、
舞踊や無言劇の著作物、また、演劇や落語や漫才の台本のような言語の著作物など音楽の著作物以外の著作物を演じるときに働く権利が上演権ということになります。22条にもあるように、著作物の無形的利用に関する権利を規定する条文には「公に」という用語が頻繁に出てくるので、まずこの用語の意味から解説します。
22条で、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的」とすることを「公に」と定義しています。「公衆」については、2条5項で「この法律にいう『公衆』には、特定かつ多数の者を含むものとする。」と規定しています。したがって「不特定の者」だけでなく「特定多数の者」も「公衆」に該当します。換言すれば「特定少数の者」以外は公衆ということです。
「直接見せ又は聞かせる」という条件には、聴衆の面前で演奏したり上演したりする場合はもちろんのこと、演奏や上演をしている場所には聴衆や観衆はいなくても、その模様を回線等で結んで別の場所にいる公衆に見せたり聞かせたりする場合も含まれます。
上映権や演奏権は「公に」行うときに働くので、公に行われない上演や演奏については、権利が働きません。たとえば、家で家族の前で芝居をしたり歌ったりすることは、公衆を対象としたものではなく特定少数の者が相手なので、また、舞台やコンサートのリハーサルで上演したり演奏したりすることは、公衆に見せまたは聞かせることを目的としていないので、いずれも上演権や演奏権は働かないとことになります。
演奏権が働くのは、典型的には、コンサート会場、ライブハウス、カラオケボックスなどでの生演奏ですが、CDなどに録音した音楽を再生するときにも演奏権が働くので(2条7項)、喫茶店、スナック、デパート、遊園地などでの再生演奏や、ファッションショー、シンクロナイズド・スイミング、新体操、サーカスなど再生演奏をともなうイベントや競技会での音楽利用にも演奏権が働いてきます。公に音楽が流れるところでは、ほとんどのケースで演奏権が働いてくるものと考えて良いでしょう。
ところで、著作物を利用する際は、その利用主体とされる者つまり「利用者」が著作権者の許諾を得、使用料を支払わなければなりません。では著作物を上演したり演奏したりする場合、その利用者は誰なのでしょうか。それは、著作物を演じている実演家でも、イベントが行われている会場の持ち主でもなく、そのイベントの主催者です。もちろん、実演家自身が主催する場合や会場の自主公演の場合は、それらの者が利用者となります。また、お店でカラオケを伴奏にお客が歌う場合やライブハウスで出演者が生演奏を行う場合の利用者は、それらの施設の経営者です。カラオケ施設での歌唱やライブハウスでの生演奏に関する利用主体についてのこのような考え方は、裁判の積み重ねにより確立されたものです。
上映権(22条の2)
著作者は、著作物を公に上映する権利である「上映権」を専有します。上映とは、「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。」と定義されています(2条1項17号)。
上映権は、以前は映画の著作物にかぎって認められていましたが、その後の法改正によって、映画の著作物以外の著作物の場合も、スクリーンやディスプレイ画面などに映写して公衆に提示するとこの権利が働くようになりました。
なお、定義にもあるように、映画の著作物の上映にともなって、映画に固定されている音楽や言語の著作物が再生されることも上映にあたります。したがって、フィルムコンサートを行うときに働く音楽著作権に関する支分権は、演奏権ではなく上映権になります。
公衆送信権(23条1項)・伝達権(23条2項)
23条1項で「公衆送信権」を、同条2項で、公衆送信される著作物を受信機を用いて公に伝達する権利である「伝達権」を規定しています。
「公衆送信」とは、「情報を公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」です(2条1項7の2号)。公衆によって「直接受信」
されることを目的とする送信を対象としているので、情報制作者と情報発信者の間を有線でつないで情報の電気信号を流す行為は、公衆送信に該当しません。また、
同一事業者における同一構内での送受信については、プログラムの著作物を送信する場合を除き、公衆送信から除外されます(2条1項7の2号)。
著作権法では、公衆送信をつぎのように4つに分類しています。
まず、同一の内容の送信が同時に公衆によって受信されることを目的とするもの(同一の情報を一斉に送信するもの)と、情報の送信をユーザーからの求めに応じて行うものに分類し、更に、前者の送信を、無線による送信(放送)と有線電気通信による送信(有線放送)に分け、後者の送信を、これを自動的に行うもの(自動公衆送信)とそうでないもの(たとえばFAXサービスのようなもの)に分けています。
ユーザーからの求めに応じた送信について、これを自動的に行うものとそうでないものに分類しているのは、自動的に行うものに「送信可能化」の権利を付与するためです。
また、同一の情報を一斉に送信するものについて、無線である「放送」と有線である「有線放送」に分類したのは、条約上保護の義務を負うのが「放送」だけなので、両者を区別する必要があったからです。
これらの分類を図式化するとつぎのようになります。

公衆送信権は、著作物を放送、有線放送、自動公衆送信などの方式により公衆送信することを許諾する権利ですが、このうち自動公衆送信を行うときに働く公衆送信権には「送信可能化」を許諾する権利(送信可能化権)も含まれます。
アーティストが持つ権利を理解しよう(その4後半)に続きます。
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会社名 クリムゾンテクノロジー株式会社
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事業内容 音楽配信ディストリビューション、Voidolシリーズの開発・販売、ソフトウェア受託開発