アーティストが持つ権利を理解しよう(その4後半)

アーティストが持つ権利を理解しよう(その4前半)からの続きになります。

 

送信可能化とは

「送信可能化」は著作権法の2条1項9の5号において定義されていますが、簡単にいうと、インターネットに接続されているサーバーに情報を入力したり、情報が入力されているサーバーをインターネットに接続したりして自動公衆送信を可能な状態にすることです。

このように、送信可能化権は、自動公衆送信を可能にする行為に対して働く権利なので、著作物を無断でインターネットにアップロードすると、実際には自動公衆送信は行われなくても公衆送信権の侵害になります。

なお、自動公衆送信について働く公衆送信権(送信可能化権付きの公衆送信権)を、放送や有線放送など自動公衆送信以外の公衆送信について働く公衆送信権と区別して「自動公衆送信権」と呼ぶことがあります。つまり「公衆送信権+送信可能化権=自動公衆送信権」というわけです。「音楽配信」は自動公衆送信なので自動公衆送信権が働きます。

 「伝達権」とは、公衆送信される著作物を、受信装置を用いて公に伝達するときに働く権利で、たとえば、テレビやラジオの放送を受信してそれを店内のお客に見せたり聞かせたりするときに働きます。ただし、権利制限規定により、通常の家庭用受信装置による伝達については、伝達権が働きません(38条3項)。

 

口述権(24条)

言語の著作物を公に口述する権利が「口述権」です。著作権法では口述を、「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。」と定義しています(2条1項18号)。朗読以外の口述の方法としては、演説や講演などが考えられます。なお、言語の著作物を実演すると上演権が働くことになります。

録音された口述を再生するときにも口述権が働きます。ただし、映画の著作物に録音された口述を再生するときは、口述権ではなく上映権が働きます。

口述権は、小説、詩歌、論文など言語の著作物に特有の権利ですが、音楽の著作物のうち「歌詞」は言語の著作物でもあるので、歌詞を朗読すると演奏権ではなく口述権が働くことになります。

 

非営利、無料の場合の演奏権等の制限

つぎに、上演権、演奏権、上映権、口述権を制限する規定について解説します。

38条1項では、営利を目的とせず、かつ観衆や聴衆から料金を受け取らないなど一定の条件を満たす場合は、公表された著作物であれば無許諾で公に上演し、演奏し、上映し、または口述することができると定めています。この規定が適用される典型的な例としては、学校などでの学芸会や演奏会、公民館での上映会などが考えられます。

この権利制限規定の前提となる条件を箇条書きに整理するとつぎのようになります。なお、これらの条件に加え、48条1項3号の規定により、慣行があるときは出所明示(著作者名の表示など)を行う義務が生じます。

①公表された著作物であること

②営利を目的としていないこと(非営利)

③聴衆・観衆から料金をとらないこと(無料)

④出演者等に報酬が支払われないこと(無報酬)

 

これらの条件のうち「営利を目的としていないこと」(非営利)とは、その著作物の利用が直接的にも間接的にも利用者の営利につながらないことをいいます。したがって、商品のキャンペーン・イベントなどで音楽を演奏することは、イベント自体は収益を目的としていないものの、商品の販売促進を目的としているので営利目的と判断されます。

 つぎに、「聴衆・観衆から料金をとらないこと」(無料)とは、著作物を聴衆・観衆に見せたり聞かせたりすることの対価を徴収しないことですが、この場合、イベントの必要経費だけを入場料とすることも料金とみなされます。

 

また、「出演者等に報酬が支払われないこと」(無報酬)とは、著作物の実演・口述を行う者に演奏料や出演料などが支払われないことです。なお、出演者等に実費程度の交通費や食事代を支給するのは、ここでいう報酬の支払いに該当しません。

 

ところで、38条1項の権利制限規定は、著作物を翻案等により利用することまでは認めていないので(43条)、音楽を無断で編曲して演奏することはできないことになります。もちろん、この場合の「編曲」とは、著作権法上の編曲、つまり二次的著作物と評価できるような創作性のある編曲をいいます。したがって、原曲をボーカル担当のキーに合うように移調するとか、伴奏をバンド編成に合わせて手直しする程度のことは、そもそも編曲に該当しないので問題にはなりません。

 音楽の発表会やコンクールで音楽を器楽演奏する場合などに、音楽出版社に対して編曲の許諾を求める問い合わせが入ることがありますが、これは、38条1項の権利制限規定によって無断で演奏できる場合であっても、編曲については許諾を得る必要があるからです。

 

 しかし、筆者の権利者サイドと利用者サイドの両面での経験からは、無断で演奏できる場合に編曲の許諾を求めるケースは少なく、二次的著作物に相当するような編曲を無断で行って演奏してしまうことの方が多いような印象を受けます。そもそも音楽を演奏するには著作権者の許諾が必要という大原則すら知らない人がいる中で、無断で演奏できる場合であっても編曲の許諾は必要となることを知っている人などほとんどいないのが現状ではないでしょうか。

なお、無断演奏が可能なケースで編曲の問い合わせがあった場合、音楽出版社は、その演奏の収録物を頒布しないことを条件に編曲を認めることが多いようです。

余談ですが、JASRAC管理作品を編曲したり訳詞したりすることを許諾する権利(著作権法27条の権利)はJASRACではなく音楽出版社が管理しています(音楽出版社の付いていない作品は著作者が管理)。

 

 

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